Isao Endo  遠藤 功

遠藤功が「現場力」を語るコラムをお届けします

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早稲田大学大学院教授、株式会社ローランド・ベルガー会長を務める遠藤功のプロフィールを紹介します

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『現場力を鍛える』『見える化』など、遠藤功の書籍を紹介します

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連載コラム「現場通信」

Weekly 現場通信 vol.26 カタール訪問記(2)

[2010-07-12]

 前回お話ししたように、今回のカタール訪問はカタールガス向けの日本的経営に関するセミナーでの講演が目的でした。このセミナーは2日間に亘り行われました。カタールガスのナンバー2であり、COOであるアルクライフィさんを始め、40名近い経営幹部、ミドルマネージャーが参加しました。質問も多く、とても熱心であることが伝わってきました。(写真は会場の様子です)
なぜ日本とは文化も風習もまったく異なるカタールガスが日本的経営に興味を持ったのでしょうか?
 カタールガスはLNGの生産・出荷のオペレーションを開始してまだ10年余の若い会社です。QG1(カタールガス1)と呼ばれる年間600万トンを産出する最初の設備から始まり、現在ではQG4の建設が進んでいます。QG4がフル稼働した時の総産出高は4200万トン。世界最大級の規模です。

 ちなみにこのガス田の埋蔵量は200億トンと言われています。ですから、今の産出量をこのまま維持すれば、楽に100年以上は持つわけです。
 この10年で会社は右肩上がりで成長してきました。そして、その間に欧米の大手石油メーカーから経営の仕組み、オペレーションの仕組みを導入し、欧米流の近代経営を学んできました。安全管理、生産管理、供給管理、労務管理などそれなりの管理、運営はできるようになりました。
 しかし、オペレーションの責任者であるアルクライフィさんは決して今の状況に満足していません。いくら欧米流の仕組みを導入したと言っても、品質問題や納期トラブル、軽微な事故などは無くならないからです。
 安全で効率的なオペレーションを実現するためには、もっと違うものを学ばなくてはならないと彼は感じていました。そして、彼が目を向けたのが日本製の自動車、中でもトヨタ車でした。
 実際、カタールでは他の中東諸国同様、トヨタ車が圧倒的に人気があります。特に、ランドクルーザーは不動の人気です。耐久性に優れ、品質トラブルがほとんどないトヨタ車は砂漠の地である中東では“命綱”なのです。

 世界最高と言われる品質はどこから生まれるのか。彼は日本的経営を学びたいと考えました。そして、ビジネス上の取引のある三井物産、中部電力に相談し、今回のセミナーが企画されることになったのです。
 日本から派遣された講師は私を含め5名。私はセミナーのトップバッターとして、日本企業においてオペレーションとはどのような位置付けなのか、現場力とは何か、自律的、能動的な現場を創り出すためにはどうすればよいかなどを話しました。(写真は主催者であるアルクライフィさんと日本側参加メンバーの記念ショットです)
 キーワードは「自発性」です。与えられた仕事はこなす、言われたことはやるというだけでは、本当の意味で強いオペレーションとは呼べません。コストにしても、品質にしても、安全にしても、現場のひとり1人がその当事者としてどこまで自発的に取り組みかが大切だと話しました。
 そして、「改善」についても一過性的な活動ではダメで、10年、20年続く「改善マラソン」にまで高めなければならないことも強調しました。「継続性」「粘着性」こそオペレーションを強くする鍵だと伝えたかったのです。
 終了後、アルクライフィさんとランチをとりながら話をしました。彼は私がセミナーで話した内容を100%理解していました。そして、「カタール的なよさと日本的なよさをうまく融合するようなモデルをこれから考えたい」と言っていました。
 文化や風習がまったく異なるカタールで、日本的な要素を取り入れたオペレーションモデルの構築はけっして容易ではありませんが、今回のセミナーがそのきっかけとなってくれればと願っています。
 そして、中東の国が日本的経営に興味を持ってくれているという事実に、日本人自身が気が付かなければなりません。日本的なよさに気が付いていないのは、当の日本人なのではないかという思いを最近強くしています。

[今週の出会い]

 カタールでのセミナーに講師としてご一緒した岩城生産システム研究所代表取締役の岩城宏一先生との会食時の記念ショットです。岩城先生はトヨタ生産方式によるモノづくり現場の指導者として、とても著名な方です。トヨタ生産方式を生みだしたトヨタ自動車の大野耐一元副社長の薫陶を受けられた直伝の指導者です。今回のセミナーでも「“管理”とは“自主管理”のことである」というトヨタ生産方式の神髄を伝えるべく、熱い講話を聴かせていただきました。

[今週のシナ]

 シナは随分と元気になりました。ソファーやベッドで大半の時間を過ごしていたのが、ソファーやベッドから降り、以前のようにリビングルームや部屋を“徘徊”するようになりました。キッチンから段ボール紙を見つけて、咥え、ソファーまで一目散に走るようにもなりました。もう痛みはないようです。骨折した当初は落ち込み、見るのも可哀想なぐらいうちひしがれていましたが、眼にも力強さが戻ってきました。今週、動物病院で再度診察を受けます。ギブスが外れることを願うばかりです。


(お知らせ)来週はドイツ出張のため、「Weekly現場通信」をお休みさせていただきます。7月26日にドイツ出張の様子をお知らせしますので、お楽しみに!